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名古屋地方裁判所 平成5年(行ウ)53号 判決 1994年10月28日

愛知県愛知郡日進町大字浅田字平子四-三五四

原告

夏目正

名古屋市中村区太閤三丁目四番一号

被告

名古屋中村税務署長 中嶋一夫

右指定代理人

加藤裕

同右

佐々木博美

同右

井口眞治

同右

木村晃英

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告の昭和六一年分の所得税につき被告が平成元年十二月二七日付けでした再更正処分が無効であることを確認する。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同趣旨

第二当事者の主張

一  原告の主張

1  被告は、原告の昭和六一年分の所得税につき、昭和六二年七月九日付けで所得税総所得金額を一億六〇二〇万六四六三円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)をし、平成元年十二月二七日付けで総所得金額を二億〇四一九万〇五六七円、土地の譲渡等に係る事業所得の金額を五五九万九二八五円とする増額再更正処分(以下「本件再更正処分」という。)をした。

2  しかしながら、本件更正処分及び本件再更正処分には、以下のとおり、重大かつ明白な違法事由がある。

すなわち、原告は、瀬戸市西山町二丁目二一番一(公衆用道路・三九平方メートル。以下「本件土地」という。)を所有していたが、昭和五七年二月六日、訴外瀬戸市に対し、本件土地を公衆用道路として寄付採納した。しかるに、被告は、本件更正処分及び本件再更正処分に当たり、瀬戸市所有の本件土地を原告の所有として、原告の期末棚卸資産(金三三〇万円相当)に計上した。

3  よって、原告は、本件再更正処分が無効であることの確認を求める。

二  原告の主張に対する被告の認否

第1項の事実は、認める。

三  被告の主張

1  被告は、平成二年二月二六日付けで原告の昭和六一年度の所得税につき、総所得金額を一億五二三六万四三〇四円、土地の譲渡等に係る事業所得の金額を九三七万九九五九円とする減額再々更正処分(以下「本件再々更正処分」という。)をした。

2  原告は、名古屋地方裁判所昭和六三年(行ウ)第四二号事件において、本件再更正処分(本件再々更正処分による一部取消後のもの)につきその取消しを求め、第一審において一部の請求を認容し、その余の請求を棄却する旨の判決を受け、同判決は、原告からの控訴を棄却する旨の判決(平成四年九月二四日判決)、上告を棄却する旨の判決(平成五年二月二五日判決)により、確定している。

したがって、原告は、本件再更正処分の取消しを求める訴訟(以下「別件取消訴訟」という。)において、その適法性を争った以上、同一処分について改めてその無効確認を求める利益を有していないというべきである。

また、同一年分の課税処分の無効確認を求める本件訴えは、別件取消訴訟の判決の既判力にも触れ、不適法である。

四  被告の主張に対する原告の反論

原告が本件で主張する違法事由は、前訴終了後に明らかになったものであり、前訴においては、争点となっていなかった。したがって、原告は、本件再更正処分の無効確認を求める利益を有している。

理由

一  被告が、原告の昭和六一年分の所得税につき、昭和六二年七月九日付けで本件更正処分をし、平成元年一二月二七日付けで、本件再更正処分をしたことについては、当事者間に争いはない。

二  次に証拠(乙三ないし五)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

1  被告は、平成二年二月二六日付けで原告の昭和六一年度の所得税につき、総所得金額を一億五二三六万四三〇四円、土地の譲渡等に係る事業所得の金額を九三七万九九五九円とする減額再々更正処分をしたこと。

2  そして、原告は、別件取消訴訟において、本件再更正処分(本件再々更正処分による一部取消後のもの)につきその取消しを求め、第一審において、総所得金額が一億五一二五万一〇一八円を、土地の譲渡等に係る事業所得金額が九三七万四六七五円を超えるとしてされた部分を取り消し、その余の請求を棄却する旨の判決を受け、同判決は、原告からの控訴を棄却する旨の判決(平成四年九月二四日判決)、上告を棄却する旨の判決(平成五年二月二五日判決)により、確定したこと。

三  右一、二において判示したところによると、本件再更正処分中、本件再々更正処分により取り消された部分及び別件取消訴訟における第一審判決により取り消された部分については、その効力がないことにつき当事者間に争いはないものと認められるから、原告が、その部分について無効確認を求める利益を有していないことは明らかである。

また、本件再更正処分のその余の部分については、別件取消訴訟における第一審判決により違法でないことが確定しているから、その部分に重大かつ明白な違法がないことも当然に確定していることになる。したがって、原告は、その部分に重大かつ明白な違法事由があるとしてその無効確認を求める利益を有していないことになる。

なお、本件において原告が主張している本件再更正処分の違法事由は、別件取消訴訟の時点で存在していた事由であるから、仮に原告において別件取消訴訟後にその存在を知ったとしても、右に判示した別件取消訴訟における既判力を否定する根拠とはならない。

四  よって、本件訴えは、不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 森義之 裁判官 田澤剛)

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